大学院
1. 医学哲学・倫理学分野の基本方針
医療倫理について表面を撫ぜただけの個人的見解を一見それらしく書くことぐらいなら、高校生にだってできます。その程度の人材の育成は、わたしたちの目指すところではありません。〈医学哲学〉を看板にかかげる研究室は、この国では初にして唯一です。軽率に、いきなり狭く直截に医療倫理の諸問題に切りこむのでなく、哲学的にものを考える基礎的な力をやしないながら、さらには文学と社会科学にも目を向け、それをベースに医学・医療がはらむ哲学・倫理学的問題に取り組むのが、当研究室の基本的な構えです。
平成16−17年度科研費基盤研究(C)の課題は「予防医学における自律とパターナリズムに関する倫理学的研究」、19−21年度の課題は「臨床的医療倫理学の方法論的研究」、22−24年度科研費基盤研究(C)の課題は「臨床倫理学の原理論および方法論の基礎づけ」、23−24年度科研費若手研究(B)の課題「感染症予防医学における介入の倫理問題の考察」、25−28年度科研費基盤研究(C)の課題は「臨床倫理学教育における解釈学的アプローチ法の構築と評価」、28−31年度科研費基盤研究(C)の課題は「解釈学的臨床倫理学とその方法論の基礎としての近代ロマン主義的解釈学の研究」です。また20−22年度厚生労働科研「HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究」の主任研究者として、他大学研究者やNGOとの協働を進めました。韓国・梨花女子大学校医科大学、国立台湾大学医学系社会医学科、オランダ・自由大学メタメディカ、同国・ナイメーヘン大学IQセンターと深い交流関係をもっており、共同研究や国際会議の開催を継続しています。
2. 研究テーマ
教授はこれまで、予防医学の倫理学、健康概念の批判的検討、エイズをめぐる倫理問題、医療倫理学教育の方法論、臨床倫理学の方法論への文学と歴史学や解釈学の寄与などに取り組んできました。しかし 研究テーマの選択は、各人の志向の自由に完全にゆだねられています。学問自体あるいは方法論上の性格から、研究活動は基本的に研究者個人単位で行います。基礎的な教育、読書会や討議は徹底して行いますが、共同報告や共著による投稿の形はとりません。
3. 入学方法および要件 読書会
研究活動上、語学力・読解力を必要とします。十分でない方には入学決定後に指導いたします。語学力に自信がないという方は、早めにご連絡ください。レベルなどにおうじて学習書や学習法についてアドバイスいたします。
なお、学生を主対象とした読書会で、これまでレヴィナス『時間と他者』(2011)、W・ディルタイ『比較心理学』とカント『判断力批判』(2012)、ハーバマス『ポスト形而上学の思想』とカント『純粋理性批判』(2013)を読み、2014年度からはヘーゲル『精神現象学』を読んでいます。
4. 大学院生の実態
本学医学科卒業生1名が学位を取得し、現在、博士課程に2名が在籍しています。
5. 問い合わせ
メイル: medphilosophie@gmail.com 共用施設棟4階EV降りてすぐ左手に研究室があります。